堤防の付け根のフェンスに「関係者以外立入禁止」の札が下がっていて、その先で何人かが竿を出している。
釣り場では、こうした光景を見かけることがあります。
先に人が入っていても、そこが入ってよい場所になるわけではありません。
釣りができるかどうかを決めるのは、その場所を管理している自治体や漁協などの管理者です。
判断に迷ったら、現地の掲示と管理者の指示に従い、はっきりしない場所では竿を出さないというのが、いちばん単純で確実な線引きになります。
「釣り禁止」と「立入禁止」は意味が違う
よく見かける掲示と、その意味
掲示の書き方は場所ごとに違いますが、釣り場でよく見かけるものを並べると次のようになります。

| 掲示の例 | 禁止されていること | 釣り人がすること |
|---|---|---|
| 「釣り禁止」 | その場所で釣りをすること | 歩いて通れる場所でも竿は出さない |
| 「立入禁止」「関係者以外立入禁止」 | その場所に入ること自体 | 柵・ロープ・チェーンの内側に入らない |
| 「投げ釣り禁止」「ルアー禁止」 | 特定の釣り方 | 書かれている釣り方をしない |
| 「撒き餌禁止」「コマセ禁止」 | 撒き餌を使うこと | サビキでもコマセを使わない |
| 「夜間立入禁止」「◯時〜◯時閉鎖」 | 決められた時間帯に入ること | 時間外は入らない、閉まる前に出る |
「釣り禁止」とだけ書かれた場所でも、通り抜けてよいかどうかは場所ごとに違うので、続きの文言や管理者の案内を確かめます。
「立入禁止」は、竿を出すかどうかに関係なく、入ること自体が禁止です。
「投げ釣り禁止」の掲示がある場所での釣り方は、ちょい投げ釣り入門の「投げてよい場所かを確かめる」でもふれています。
立入禁止には、それぞれ理由がある
横浜市港湾局は、港の施設への立ち入りを制限している理由として、国際船舶の保安と荷役作業の安全確保を挙げています。
同じ案内では、防波堤や護岸は人が立ち入ることを想定した構造ではなく、避難手段もないため、高波などで転落事故につながるおそれがあるとしています。
柵やフェンスの先には、波が来ても逃げ場のない場所があると考えておきます。

消波ブロックの上も、足を踏み外す事故が起きやすい場所です(穴釣りのやり方では、消波ブロックで起きている事故を扱っています)。
入ってしまうと、罰せられることもある
水産庁の「漁港における釣り利用・調整ガイドライン(案)」(2023年)は、立入禁止の場所に入った場合には、軽犯罪法違反として処罰されることがあるとしています。
玉野海上保安部と港湾管理者の呼びかけでも、立入りが禁止された港湾施設へ無断で入ると、法令や条例で罰せられることがあるとされています。
どの法令や条例が当てはまるかは場所によって違うため、ここでは断定しませんが、「柵を越えない、札の先に行かない」で守れることです。
掲示が見当たらないときの確かめ方
「釣り禁止の看板がない堤防なら、釣ってもいいのでは?」
看板がないことは、釣りが認められているという意味にはなりません。
看板が古くなって外れている場所や、別の入口にだけ掲示がある場所もあります。
次の順に確かめて、それでもはっきりしなければ、その日は別の釣り場にします。
堤防の入口だけでなく、付け根の柵、駐車場、港の事務所のまわりにも看板がないかを見ます。
「釣りをされる方へ」のように、ルールをまとめた看板が出ていることもあります。
漁港は市町村や都道府県、港は港湾管理者が管理していることが多く、釣りの禁止区域や開放時間を公開している場合があります。
「あの堤防は今も釣りができますか」と聞けば、閉鎖や立入制限の最新の情報を教えてもらえることがあります。
迷う場所で釣るより、柵とトイレがあり、釣りが認められている海釣り施設や釣り公園を選ぶ方が、一日を落ち着いて過ごせます。
ネットの釣果情報より、現地の今の掲示を優先する
釣りの情報サイトやSNS、地図アプリの口コミには、何年も前の釣果がそのまま残っていることがあります。
その後に事故やごみの問題で立入禁止になった場所でも、古い投稿だけを見ると「釣れる場所」に見えてしまいます。
ネットで見た情報と現地の掲示が違うときは、現地の掲示が今のルールです。
釣りができる場所の候補の見つけ方は、初心者向けの釣り場の探し方で、地図アプリでの下見の手順から扱っています。
出かける前には、天気予報で風と波の高さを見て、波をかぶる高さの場所には、たとえ釣りが認められていても立たないようにします。
釣り場で守りたいマナー
漁港の管理者がいちばん困っているのは「ごみ」
水産庁が2022年度に漁港管理者を対象に行ったアンケートでは、漁港の釣り利用の課題として、「釣り人によるゴミの放置、処理負担」がもっとも多く、次いで「釣り禁止・立入禁止区域への立ち入り」「認めていない場所への駐車」が挙がりました。
同じガイドライン(案)には、悪質な釣り人によるごみの放置や駐車、漁船へのいたずらが続き、漁港の立ち入り制限を検討せざるを得なくなる地域の例も載っています。
釣り場が閉鎖される背景には、こうした一部の人の行動の積み重ねがあることが少なくありません。
ガイドライン(案)は、漁港の施設は本来の漁業の利用に支障がない範囲で、釣りなどにも使わせることができるという考え方を示しています。
漁港で釣りができるのは、漁業の邪魔にならないことが前提だと考えておくと、何をしてはいけないかが見えてきます。
ごみと汚れは、来たときより少なくして帰る
- 食べ物の容器、仕掛けの袋、切った糸や針は持ち帰る:ガイドライン(案)でも、仕掛けや釣り糸の放置が課題に挙げられている
- コマセで汚した足元は、海水をくんで流してから帰る:流し方はサビキ釣りのやり方の帰る前の手順にある
- 釣れた魚を堤防の上に捨てていかない:持ち帰らない魚は、生きているうちに海へ返す
- トイレのない釣り場では、事前に近くのトイレを確かめておく

毒のあるトゲを持つ魚は、死んだあとも刺されると痛むものがあり、堤防に放置すると後から来た人がけがをするおそれがあります(毒のある魚の目印は釣れて危ない魚の見分け方と対処の早見表に)。
船と漁業の仕事を優先する
漁港は、まず漁業のための場所です。

ガイドライン(案)では、一部の釣り人による漁船への釣り糸の巻き込みや進路の妨害が、漁業活動の支障として挙げられています。
船が近づいてきたら仕掛けを巻き上げ、荷さばき場や船を係留している場所、漁具を置いている場所には近づかないのが基本です。
やってはいけないこと
駐車場以外の場所や、漁港の作業場所に車を停める
先に釣っている人のすぐ横に、声をかけずに入る
後ろや左右を確かめずに、仕掛けを振りかぶって投げる
夜や早朝に、大声で話したり車のドアを強く閉めたりする
ヘッドライトを海面や周りの釣り人の顔に向ける
混んでいる堤防では、隣の人と竿2本分ほどの間隔をあけ、間に入るときは「ここで釣ってもいいですか」とひと声かけます。

魚や貝のとり方にもルールがある
釣りそのものが認められている場所でも、とってよい生き物と、とってはいけない生き物があります。
アワビとナマコは、漁業の許可や漁業権に基づかずにとると、3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金の対象です(水産庁、2020年12月から)。
サザエなどの貝類、ワカメなどの海藻、エビやタコなどは、漁業権の対象になっている漁場があり、水産庁は組合員以外がとると漁業権の侵害になるおそれがあるとしています。
魚の大きさの制限や、とってはいけない期間、使ってよい道具は、都道府県ごとの漁業調整規則などで決められています。
このほか、海区漁業調整委員会が、釣り人も含めて、使える道具や禁止区域、体長の制限などを指示することがあります。
水産庁によると、指示に従わず、さらに都道府県知事の命令にも従わない場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金などの対象になります。
釣りに行く都道府県の規則や、地元の漁協の案内を確かめてください。
よくある疑問
- 立入禁止の場所で釣っている人がいたら、注意した方がいいですか?
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無理に注意してトラブルになるより、自分はその場所に入らず、気になる場合は管理者に伝える方が安全です。
その人が波をかぶりそうな場所にいる、海に落ちたなど、命に関わる状況を見たときは、118番(海上保安庁)に通報します。
- 駐車場のない釣り場には、どう行けばいいですか?
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近くのコインパーキングなど、停めてよい場所に停めて歩くか、駐車場のある別の釣り場を選びます。
ガイドライン(案)でも、釣り人の駐車が漁港の利用や地域の生活道路の妨げになっている例が挙げられています。
「少しの間だけ」の路上駐車や、漁港の空きスペースへの駐車も避けます。
- 海釣り施設のルールは、ふつうの堤防と違いますか?
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施設ごとに、利用時間、使える釣り方、撒き餌や投げ釣りの可否、ライフジャケットの着用などのルールが決められています。
施設の利用規約と、受付や係員の指示が最優先です。
掲示を守っていても足を滑らせることはあるので、ライフジャケットの選び方と着け方も出かける前に確かめておきます。
明日もここで釣れるように
今日竿を出した堤防が、来年も釣りのできる場所であり続けるかどうかは、そこに来る釣り人の振る舞いで決まります。

掲示に従う、ごみを残さない、船と作業の邪魔をしない。
帰る前に一度だけ振り返って、足元に糸くず1本残っていないかを見てから、駐車場へ戻ってください。



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